鍼灸の授業記録~20200111~
【生理学】
④温度覚
冷点の方が温点よりも密度が高い。
皮膚に加わる温度刺激がある範囲にあると、温覚も冷覚も起こらない。普通33℃前後がこれに当たり、無関(感)温度という。
基本どちらも受容器が反応して、刺激の多い方を感じているような仕組み。
※アイシングなどは冷やしすぎているケースが多く、25℃に近づけるために熱を奪うというイメージを持っておくといい。
25〜40℃の範囲は温も冷も反応している。
⑤痛覚
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⑥くすぐったい感じと痒い感じ
心理的要因が大きい。自分の手で触れるときは、その手自身に与えられる触刺激によるインパルスが先に大脳皮質に到達して、くすぐったい感覚を抑える。
痒い感じは、皮膚の炎症、外傷、化学的刺激で痛覚受容器が弱く刺激された時に起こるらしい。炎症などの際に、皮膚の肥満細胞から局所に放出されたヒスタミンが細い求心性神経線維を刺激することが原因の一つと考えられ、抗炎症剤や抗ヒスタミン剤が痒みを和らげる効果を持つことが多いが、治療困難な痒みもある。
・深部感覚
眼を閉じた状態でも、手足の位置や曲がり具合、その動きなどを感じる方ができる。これらの感覚を深部感覚という。皮下、筋、腱、筋膜、骨膜、関節などに受容器がある。筋紡錘、腱受容器のほか、間接包にあって間接運動を感知するルフィニ終末やパチニ小体などがある。
※筋の温度受容器:筋や関節にはさらに温度受容器もある。
①運動感覚(固有感覚)
眼を閉じていても四肢の身体部位の位置が分かる位置感覚、関節の動きがわかる動きの感覚、物体を持ってその重さやそれを保持するのに必要な筋力がわかる力、重さの感覚などからなる。
関節、筋肉、腱の機械的受容器である。これらに加えて皮膚が関節の動きにつれて伸展したり、圧縮されたりすることによって皮膚の機械的受容器が興奮し、運動感覚に影響を及ぼす。
②振動感覚
物体の振動に対する感覚で、皮膚や深部組織に分布するパチニ小体が関与する。
③深部痛覚
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※感覚障害:感覚を感じにくい場合を感覚鈍麻、完全にわからない場合を感覚麻痺という。また、しびれの感覚は異常感覚という。位置感覚が障害されると姿勢や歩行のバランスの崩れ、運動失調が起こる。糖尿病性ニューロパシーでは、四肢の感覚鈍麻、異常感覚、位置感覚の低下などの感覚障害が生じる。
・体性感覚の伝導路
①手足・後頭部・体幹の体性感覚
温度感覚、痛覚、原始触覚は脊髄視床路を通り、深部感覚や識別性触覚は後索-内側毛帯路を通る。
体性感覚の伝導路には脊髄網様体路や脊髄小脳路などがある。
②顔面の体性感覚
顔面の体性感覚の情報は、三叉神経を通って脳幹と脊髄に送られた後、視床を経由して大脳皮質の体性感覚野に伝えられる。
③体性感覚入力の脊髄分節
体性感覚神経は脊髄分節機構を持つ。皮膚分節は、後頭部から下肢に向かい、頸髄から仙髄の各分節支配領域が規則正しく並ぶ。皮膚と同様に筋肉に分布する脊髄神経の脊髄への入力部位の相違から、筋分節が存在する。筋分節の配列は皮膚分節よりも複雑である。
・内臓感覚
内臓感覚には、空腹感、渇き、尿意、便意、などの臓器感覚と内臓感覚とがある。
※内臓の受容器:機械的受容器、化学受容器、一部温度受容器、および侵害受容器が分布している。皮膚、筋肉、関節を支配する体性神経と同様に、胸腔、腹腔、骨盤腔などにある内臓を支配する自律神経(たとえば、迷走神経、内臓神経、骨盤神経など)には、多数の球審制神経線維が含まれている。内臓の求心性線維からの情報は、体性神経の求心性線維からの情報とは異なり、通常ほとんど意識にのぼらず、主に無意識下での自律機能の反射性調節に関与する内臓の受容器からの情報は、ある特別の状況でのみ意識にのぼる。意識にのぼる内臓感覚には臓器感覚と内臓痛覚がある。
①臓器感覚
内臓の特定部位に投射されることは少なく、全身的に起こることが多い。感覚の内容も明瞭ではなく、情緒的な要素を多く含む。
(1)空腹感:血液中のグルコースの低下や空腹時の胃の強い収縮(食間期伝播性収縮)などによって起こる。視床下部や肝臓・小腸に存在するグルコースの受容器、胃の機械的受容器などがこの感覚に関与する。
(2)渇き:体液浸透圧の上昇や体液量の減少、咽頭粘膜の受容器がこの感覚に関与する。
(3)便意と尿意:糞便が直腸に入ると便意を催す。直腸壁にある機械的受容器が刺激され、その情報は骨盤神経を経て中枢へ伝えられる。尿意は膀胱内に尿が貯まり、膀胱容積が約150〜300になると感じる。膀胱壁にある伸展受容器が刺激され、その情報は骨盤神経を経て中枢へ伝えられる。
②内臓痛覚
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〜痛覚〜
・痛みの分類
痛みは組織別、部位別、原因別、痛みの持続時間別に分類できる。
①痛みの組織別分類
1、表在性痛覚(皮膚の痛み)
針で皮膚を突き刺すと、瞬間的に鋭い痛みを感じる。これは局在性が明確な痛みで、刺激が止むと急速に消失する特徴がある。刺激が強い場合、この早い痛みの後に、潜時が0.5〜1秒の遅い痛みが続くことがある。これは鈍い灼け付くような痛みで空間的な広がりを持ち、ゆっくりと消失する特徴がある。このように皮膚の痛みには質の異なった2種類の痛みがある。
※熱痛覚と冷痛覚:皮膚温が45℃以上になると熱痛覚が、15℃以下になると冷痛覚が起こる。
2、深部痛覚
皮下組織、骨格筋、腱、骨膜、関節などから生じる痛みを深部痛覚という。
どちらかというと内臓感覚に近い特徴を持つ。
受容器は自由神経終末で、主にC線維によって伝えられる。骨格筋のC線維は筋の伸展や筋の収縮あるいは虚血には応じないが、虚血下での収縮によって興奮する。機械的刺激に対する痛みは骨膜が最も感じやすく、関節包、結合組織、骨格筋の順に感じにくくなる。
続きは次週!